- Prologue -
――やあ、どうもいらっしゃい。何をお求めで?ああ、別に冷やかしでも構わないよ。されたからと言って、別に僕が何か被害を被るわけでもない。見ての通り、他に客なんていないわけだしね。
――……君、ここいらでは見ない顔だね?観光かい?生憎この街におすすめできる観光地はないよ。
――いやむしろ、行かない方が良い場所の方が多いかもしれない。ちょっとこの街は、ほかの街とは明らかに異なる部分が多くてね。
――…………なに?その「明らかに異なる部分」について知るために来ただって?
――……君、一体何者だい?オカルト雑誌の取材班か何かかい?肝試し帰りに吊り橋効果を求めてやってきた大馬鹿阿呆?それとも、ただ好奇心に殺されにきただけの猫か何かとか?
――……まあ、別になんでも良いか。
赤の他人である君がどこでどんな風にのたれ死のうが、僕にはなんのデメリットもないしね。
――…いや、ほんの少し罪悪感が湧くか?いや、そんなこともどうでも良いか。
――この街について知りたいとのことだったね。確かに君は正しく、そしてとても幸運だ。
――幸いにも僕はこの街の「異常な部分」について詳しいし、君にあれこれ教えてあげることもできる立場にいる。
――ただ一つ残念なことに……この街には「余所者にあれこれ教えてやらなくちゃいけない」なんて法は存在しない。
――だからさ……一つ僕と契約をしないかい?
――ほら、よくあるだろ?「僕と契約して、魔法少女になってよ!」的なあれだよ。
――いやなに、安心しなよ。何も命を取ろうなんて話じゃない。体の一部を……って話でもない。
――ただ、"感想"が欲しいのさ。僕の話を聞いた後で、その話の感想を教えてもらいたいんだ。
――"随分と安い契約"だって?
――いやいや、喋り手にとって聞き手の率直な意見はとても重要なんだよ?
――なんせ、喋り手は自分の言葉を聞けない。自分が1番聞きやすいと思い込んでいる言葉で喋るから、それが相手にとっても聞きやすいと信じて疑わない。分かるかい?
――だからつまりさ……聞き手からの感想ってのは、喋り手の口を矯正するのにもってこいな道具なんだよ。
理解できたかい?
――…………さあ、誓約書を!!
your name…
――よし……これで君と僕、そしてこの街と君は正式な契約関係となった。
――それじゃあ、早速話を始めようか。
――なに、心配は要らないよ。
――なにか怖い話があったとしても、それはただの噂話みたいなものだからね……。